一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会

令和8年度税制改正大綱でのオープンイノベーション促進税制の延長・拡充とPE課税特例の見直しについて

政策提言

一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会

会長 郷治友孝

会長 田島聡一

 

日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)では、これまで、我が国のスタートアップのM&A(企業による合併・買収)や当該株式のセカンダリー取引を含む出口の多様化の促進、我が国のベンチャーキャピタルファンドへの海外投資家からの資金調達の促進等を目的として、必要な税制上の措置を要望して参ったところです。

そのような中、このたび自由民主党及び日本維新の会において取りまとめられた令和8年度税制改正大綱においては、スタートアップ関連施策に関し、オープンイノベーション促進税制の延長・拡充ならびに外国組合員に対する課税の特例(PE課税特例)の見直しが盛り込まれました。当協会としましては、そのような方向性について大いに歓迎の意を表するとともに、今後更なる拡充と見直しが図られることを期待いたします。

 

1.オープンイノベーション促進税制の延長・拡充について

同税制は、事業会社からのリスクマネー供給を促すとともに、M&A等を含むスタートアップの多様な出口を支えようとする重要な税制です。適用期限の延長に加え、今回の大綱で新たに示された、議決権の過半数未満の発行済株式の取得や吸収合併の対象化などは、出口の多様化を一層後押しするものであり、事業会社との連携を通じたスタートアップの成長や、スタートアップに対するリスクマネーの更なる供給強化に資する重要な改正です。今後は、その政策効果がいかんなく発揮されるようにするため、適用要件の緩和や優遇措置の拡充など、本促進税制のより一層の拡充が期待されます。

 

2.外国組合員に対する課税の特例(PE課税特例)の見直しについて

海外投資家からの資金呼び込みに向けて、国内ファンドに対する出資における障壁とされてきた本特例の要件の見直しが示されたことは初めてのことであり、大変画期的です。具体的には、持分割合要件の出資上限の引上げ、業務執行要件の緩和、恒久的施設(PE)帰属所得に関する要件の廃止等、利便性の向上と国際的なイコールフッティングの確保に資する見直しが示されています。この見直しは、海外投資家からのLP出資の参入障壁を低減し、グローバル資金を日本のスタートアップエコシステムへ呼び込むことを狙ったものであり、今後は、英語による発信も含めた国内外への周知徹底に加え、PE課税制度そのものの見直しも含めた国際的イコールフッティングのより強力な推進が期待されます。

 

今回の措置の検討・取りまとめにご尽力された関係各位の皆様に対し、あらためまして深く御礼申し上げます。当協会としましては、今後とも関係機関と連携し、我が国の新産業創出を牽引するとともにスタートアップエコシステムの健全な発展・拡大に資するための活動を積極的に行って参ります。

 

関連記事